最高裁判所第一小法廷 平成8年(オ)1770号 判決 1996年12月19日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人中島多津雄、同年森俊宏、同真早流踏雄の上告理由について
原審の適法に確定した事実関係の下においては、被上告人のした本件の根抵当権放棄により、これをしないで西日本銀行に対する弁済がされなかった場合に比べて、被上告人の株式会社春日に対する求償金債権で物的担保により満足を受けることのできないものの額がより多額になったということはできないから、債権者である被上告人の右行為は、金融取引上の通念から見て合理性を有するものであり、連帯保証人である上告人仁田脇一英が担保保存義務免除特約の文言にかかわらず正当に有し、又は有し得べき代位の期待を奪うものとはいえない。したがって、被上告人が右特約の効力を主張することが信義則に反するものとは認められないとした原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は、原判決の結論に影響のない事項についての違法をいうに帰するものであり、採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小野幹雄 裁判官 高橋久子 裁判官 遠藤光男 裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄)